「監査で是正処置を求められたけど、何から手をつければいいか分からない」
初めてのことで戸惑ったことはないでしょうか。是正処置を求められたからといって、あなた個人の責任を追及されているわけではありません。多くの場合、それは「仕組み」の見直しを求められているサインです。
この記事では、ISO監査で是正処置を求められた方を対象に、対応の進め方や是正処置報告書の書き方について解説していきます。
- 是正処置の正確な意味と、紛らわしい言葉との違い
- ISO監査で指摘を受けたときの対応の流れ
- 是正処置報告書に書くべき項目とNG例
- 業種別での是正処置報告書のサンプル事例の紹介
本記事を最後まで読んだら、初めて是正処置を担当することになっても、慌てることなく対応ができることでしょう。

ISOの教科書 編集部
- ISOの教科書 編集部の案内役
- 東証プライム上場企業に勤務後、独立
- 中小企業の担当者向けに、取得・費用・運用をやさしく解説
是正処置とは?紛らわしい言葉との違いを整理
ここでは、是正処置の定義および、是正措置や再発防止といった類似した用語のついて解説していきます。
どの用語もよく耳にする機会が多いため、ここで理解しておくと安心です。
是正処置の定義
是正処置とは、一言で言うと「問題が起きた根本的な原因を取り除き、同じ問題が二度と起きないようにするための対策」のことです。
特徴として、単に問題そのものを対処するだけでなく、「なぜその問題が起きたのか」まで掘り下げて対処します。

たとえば、床に水がこぼれているとき、その場の水を拭き取るだけでは「修正」にとどまります。
なぜ、水がこぼれたのか(蛇口が緩んでいた、コップが不安定な場所に置かれていた等)まで調べて、その原因を直すところまで行うのが「是正処置」です。同じ考え方は、業務上の問題にもそのまま当てはまります。
このように、原因まで掘り下げて対処することが、単なる「その場しのぎの対応」との大きな違いです。
是正措置との違い
「是正措置」と「是正処置」は同じ意味です。しかし、使われる場面が異なります。
ISOの場面では一般的に「是正処置」という用語が使用されますが、建築基準法や薬機法(GMP)などの法律・行政上の規制の話をするときは「是正措置」が使われます。これは業種によって決まるのではなく、依拠している制度・枠組みによって使われる言葉が変わるためです。
なお、具体的な違いについては次のとおりです。
| 処置 | 措置 | |
|---|---|---|
| 主に使われる場面 | ISOなどの品質マネジメントシステム | 法律・行政上の規制 |
| 例 | 是正処置(ISO9001) | 是正措置命令(建築基準法)、 是正措置及び予防措置=CAPA(薬機法GMP) |
ISO9001の要求事項を調べている場合は、「是正処置」という表記が正しい用語になります。
再発防止との違い
再発防止とは、是正処置によって目指す「目的」そのものを指します。
たとえるなら、「痩せる」(目的)と「食事管理・運動」(具体的な方法)の関係に近いです。「痩せたい」と思うだけでは何も進みませんが、食事管理や運動という具体的な行動があって初めて痩せられます。同じように、「再発防止」という目的を達成するための具体的な手順が「是正処置」です。

実際に、日常会話やカジュアルな場面では「再発防止」で問題ありません。しかし、ISO9001の正式な報告書などでは、規格で定められた手順を指す「是正処置」を使用するのが一般的です。
現場で「再発防止策を出して」と言われる場面は、実質的に「是正処置を行ってください」という意味です。
予防処置・修正との違い
是正処置と混同されやすい言葉に「予防処置」と「修正」があります。
| 対象 | タイミング | 考え方 | |
|---|---|---|---|
| 修正 | 起きた問題そのもの | 問題発生の直後 | その場の応急処置 |
| 是正処置 | 問題の根本原因 | 原因分析の後 | 再発防止のための恒久対策 |
| 予防処置 | まだ起きていない問題 | 問題発生前 | 未然防止 |
たとえば、折りたたみ傘で考えてみましょう。
急に雨が降ってきて濡れてしまった場合、コンビニで傘を買って解決すること(修正)はよくあることですが、未然防止として天気予報で雨の可能性を見て、外出前にあらかじめ折りたたみ傘をカバンに入れておくこと(予防処置)も想定できたかもしれません。

このように、「予防処置」も、是正処置と混同されやすい言葉の一つです。ただし、ISO9001は2015年の改訂で「予防処置」という独立した要求事項を廃止し、その考え方をリスクベースの取組み(要求事項6.1)に統合しました。そのため、現在のISO9001の要求事項には「予防処置」という言葉自体は登場しません。
いそまる大事なのは「是正処置=根本原因への対策」という軸だけです。他の言葉(措置・再発防止・予防処置・修正)は、すべてこの軸との「違い」として整理すれば頭に入りやすくなります!
ISO監査で是正処置の指摘を受けてしまった場合の対処法
ここでは、ISO監査で是正処置を受けた際の対応の流れについて解説します。
初めて対応する方は、これらの流れを理解しておくとスムーズに対処できます。
指摘を受けた直後にすべきこと
まずは慌てず、指摘された不適合の内容を正確に把握することが第一歩です。
指摘の意味を誤解したまま対応を進めると、的外れな是正処置になってしまい、次の審査でも同じ指摘を受けかねないからです。
指摘される内容は、企業やタイミングによってさまざまですが、代表的なものは次のとおりです。
| 指摘のカテゴリ | 具体例 |
|---|---|
| 文書管理の漏れ | 手順書が最新版に更新されておらず、現場に古い版が残っている |
| 力量評価の不十分 | 教育は実施したが、実際にできるかの確認まではしていない |
| 品質目標の曖昧さ | 「品質向上に努める」など、 達成基準や期限が不明確な目標になっている |
| 内部監査の形式化 | 毎回同じチェックリストを使うだけで、実効性の確認がされていない |
| 是正処置の浅さ | 「注意喚起」で終わり、仕組みそのものの改善に至っていない |
たとえば、「文書の管理が不十分」という指摘を受けたとします。これを「文書の保管場所が整理されていない」という意味だと思い込んで対応してしまうと、実際には「改訂履歴の管理ができていない」ことを指摘されていた、というようにズレが生じることがあります。
不明な点があれば、審査員や監査担当者にその場で確認し、認識をすり合わせておくことが大切です。
原因分析の進め方
指摘内容を把握したら、次に「なぜその問題が起きたのか」を分析します。
なぜなら、表面的な原因だけで終わらせると、同じ問題が形を変えて再発しやすいからです。原因分析の代表的な手法は次のとおりです。
| 手法 | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| なぜなぜ分析 | 「なぜ」を繰り返し、1つの原因を深く掘り下げる | 原因がある程度絞られている場合 |
| 特性要因図(フィッシュボーン図) | 人・設備・材料・方法など、原因の候補を幅広く洗い出す | 原因の見当がまだついていない場合 |
代表的な手法に「なぜなぜ分析」があります。「なぜ起きたのか」を5回程度繰り返し掘り下げることで、表面的な原因(担当者の確認漏れ)の奥にある根本原因(確認手順が明文化されていなかった等)にたどり着きやすくなります。なお、この「なぜなぜ分析」は、トヨタ生産方式に由来する手法として広く知られています。
是正処置の計画・実施
根本原因が分かったら、その原因を取り除くための具体的な対策を計画し、実行します。
計画する際は、「何を」「誰が」「いつまでに」行うのかを明確にしておくことが大切です。担当者や期限があいまいなまま進めると、対策が中途半端なまま放置されてしまうことがあるからです。
たとえば、「検査記録の記入漏れが多い」という原因に対して、単に「検査記録の記入を徹底する」という対策では、誰が・いつまでに何をするのかが曖昧です。
「検査担当者が、来月末までにチェックリスト形式の記録用紙を作成し、全検査員に配布・説明する」というように、担当者・期限・具体的な行動まで落とし込むことで、実行に移しやすくなります。


対策を実行する際は、関係者への周知も欠かせません。
有効性の確認・審査機関への報告
対策を実施したら、それで終わりではありません。一定期間が経過した後、その対策が実際に効果を発揮しているかどうかを確認する必要があります。
たとえば、検査記録の記入漏れが不適合として指摘された場合、是正処置を実施してから1〜3ヶ月程度の運用期間を置き、同じ記入漏れが再発していないかを確認します。
記入漏れが解消されていれば、対策は有効だったと判断し、確認した内容を記録に残します。一方で、もし依然として記入漏れが続いているようであれば、対策が不十分だったと判断し、原因分析からやり直す必要があります。


このように、有効性の確認は「対策を実施して終わり」ではなく、「対策が機能しているかどうかを検証する」工程です。
確認の結果は、次回の審査で審査機関に提出する報告書にも記載します。



焦って対策を急ぐよりも、「なぜ起きたか」を丁寧に掘り下げる方が、結果的に近道になることが多いです。
是正処置報告書の書き方
ここでは、是正処置を指摘された際に書く報告書(是正報告書)の記入のポイントを解説していきます。
これで初めて報告書の記入を任されても安心です。
是正処置報告書に記載すべき7つの項目
是正処置報告書には、一般的に次の7つの項目を記載します。
- 不適合の内容(何が、いつ、どこで起きたか)(ex. 〇月〇日の検査記録に、記入漏れが3件見つかった)
- 修正(その場でのとりあえずの対応)(ex. 未記入だった検査項目を、記憶を頼りに確認し追記した)
- 原因分析の結果(根本原因)(ex. 検査記録の記入ルールが明文化されておらず、繁忙時に省略されがちだった)
- 是正処置の内容(ex. チェックリスト形式の記録用紙を作成し、全検査員に配布・説明した)
- 実施担当者・実施期限(ex. 検査担当者Aさん、〇月末までに)
- 実施記録(対策を行った証拠)(ex. チェックリスト配布時の説明会の出席記録、改訂履歴)
- 有効性の確認方法・確認結果(ex. 導入後2ヶ月間の検査記録を確認し、記入漏れがゼロになったことを確認した)
とくに、「原因分析の結果(記入ルールが明文化されていなかった)」と「是正処置の内容(チェックリスト形式の記録用紙を作成した)」が、必ず連動していることがポイントです。
再発防止策は、特定した原因を直接解消できる内容にすることが基本です。原因と対策がずれていると、審査員から「対策が原因に対応していない」と再度指摘を受けることがあるからです。
たとえば、原因が「手順書がなかったこと」なのに、対策が「担当者に注意喚起する」では、原因そのものは解消されず対応がズレています。対策を「手順書を作成すること」にすれば、原因と対策が一致します。
よくある書き方のNG例・注意点
是正処置報告書でよく見られるNG例として、以下のようなものがあります。
- 原因分析が「担当者の不注意」で終わっている(人のせいにして終わり、仕組みの問題に踏み込めていない)
- 対策が「今後気をつけます」など、具体性に欠ける精神論になっている
- 有効性の確認方法が書かれていない
- 報告書のテンプレートを埋めただけで、実際には対策が実行されていない
- 対策に必要な予算や人員が確保されず、計画倒れになっている
いずれも、「なぜ起きたか」の掘り下げが不十分なまま対策を書いてしまうことや、実行・検証の体制が整っていないことが原因です。
「起きた原因の掘り下げ」は長期的にみると業務の遂行に影響が出ます。



「気をつけます」で終わっている報告書は、審査でほぼ確実に指摘されます。仕組みで防ぐ視点を意識してみてください。
是正処置の実例
ここでは、1次情報に基づいて再構築した是正処置の「サンプル事例」を紹介します。
ひとつずつ確認していきましょう。
「検査完了確認を行わなかった」をもとに構成した製造業の事例
まずは「検査完了確認を行わなかった」をもとに構成した製造業の事例です。


上記の事例を是正報告書としてまとめると要点は次のとおりです。
- 不適合の内容:出荷前の検査完了確認が行われないまま、製品が出荷された
- 修正:該当ロットを回収し、検査を実施した
- 原因分析の結果:検査完了確認の責任者・承認手順が定められていなかった
- 是正処置の内容:出荷前の検査完了確認手順を改訂し、確認責任者による承認を必須にした
- 実施担当者・実施期限:品質管理責任者、来月末までに
- 実施記録:手順書の改訂履歴、承認記録
- 有効性の確認方法・確認結果:改訂後3ヶ月間、出荷記録を確認し、検査未実施による出荷が発生していないことを確認した
「測定機器管理の不備」をもとに構成した食品業の事例
次に令和グループの公開記事「測定機器管理の不備」をもとに構成した食品業の事例です。


上記の事例を是正報告書としてまとめると要点は次のとおりです。
- 不適合の内容:温度管理に使用する測定機器の一部が、校正・管理の対象から漏れていた
- 修正:該当する測定機器を特定し、緊急で校正を実施した
- 原因分析の結果:新規導入した機器が、測定機器の管理台帳に追加されていなかった
- 是正処置の内容:新規機器導入時に管理台帳へ登録するルールを追加した
- 実施担当者・実施期限:品質管理担当者、来月中に
- 実施記録:管理台帳の更新履歴、ルール周知の記録
- 有効性の確認方法・確認結果:導入後の新規機器がすべて台帳に登録されていることを確認した
「文書管理の漏れ」をもとに構成した建設業の事例
続いて、同じ令和グループの公開記事「文書管理の漏れ」をもとに構成した建設業の事例です。


上記の事例を是正報告書としてまとめると要点は次のとおりです。
- 不適合の内容:現場に旧版の図面・手順書が残っており、最新版と混在していた
- 修正:現場の書類を確認し、旧版を回収・廃棄した
- 原因分析の結果:文書の版数管理の仕組みがなく、更新の周知も徹底されていなかった
- 是正処置の内容:文書管理台帳を導入し、最新版のみを現場に配布する運用に変更した
- 実施担当者・実施期限:安全管理責任者、来月末までに
- 実施記録:文書管理台帳の運用開始記録、現場への配布記録
- 有効性の確認方法・確認結果:全現場を巡回し、旧版の図面・手順書が残っていないことを確認した
テンプレート
最後に、是正処置報告書を作成する際、つまずいてしまったら、次のテンプレートに自社の状況をそのまま当てはめて使ってください。
| 項目 | 記入欄 |
|---|---|
| 不適合の内容(何が・いつ・どこで) | |
| 修正(その場での応急対応) | |
| 原因分析の結果(根本原因) | |
| 是正処置の内容 | |
| 実施担当者・実施期限 | |
| 実施記録 | |
| 有効性の確認方法・確認結果 |



3つの事例に共通しているのは、「原因分析の結果」と「是正処置の内容」がきちんと対応している点です。自社の状況に置き換えるときも、この対応関係を崩さないよう意識してみてください。
是正処置に関するよくある質問
ここでは、是正処置に関するよくある質問についてまとめました。
- 是正処置と是正措置は同じ意味ですか?
-
ほとんど同じですが、使われる文脈が異なります。ISOの要求事項に関する話であれば「是正処置」が正しい表記です。
- 是正処置と再発防止は何が違いますか?
-
再発防止は、是正処置を行う「目的」になります。
つまり、是正処置という具体的な方法を実行することで、再発防止という目的を達成するということです。
- 是正処置報告書は、指摘を受けてからどれくらいの期限で提出すればいいですか?
-
不適合(重大な指摘)は審査後60〜90日以内、観察事項(軽微な指摘)は次回審査までに対応することが一般的です。
指摘を受けた際は、審査員に正確な期限を確認しておくことをおすすめします。
- 是正処置をしないとどうなりますか?
-
認証の維持に影響する可能性があります。
指摘された不適合を放置すると、次回の審査で改めて指摘され、対応が長引く原因にもなります。
- 是正処置・予防処置・修正の違いを一言で言うと?
-
「修正=その場の応急処置」
「是正処置=根本原因への恒久対策」
「予防処置=まだ起きていない問題への未然防止」です。
なお、ISO9001は2015年の改訂で「予防処置」という独立した要求事項を廃止しており、現在の要求事項には登場しない点にご注意ください。
- 是正処置がきちんとできているかは、どうやって確認しますか?
-
対策を実施した後、一定期間を置いて、同じ不適合が再発していないかを確認します。
この確認までを含めて、是正処置の一連のプロセスとされています。
まとめ:是正処置は、正しい手順を踏めば誰でも対応できるプロセス
是正処置は、正しい手順さえ踏めば、特別な専門知識がなくても対応できるプロセスです。
大切なのは、「なぜ問題が起きたのか」を丁寧に掘り下げ、原因に対応した対策を、誰が・いつまでに行うかまで明確にすることです。焦って形だけの報告書を作るよりも、一つひとつの手順を踏んでいくことで、長期的に円滑な業務を実現できます。
- 是正処置とは、問題の根本原因を取り除き、再発を防ぐための対策
- 「是正措置」や「再発防止」などの類似した言葉は、それぞれ意味や使われる文脈が異なる
- 対応の流れは、「指摘の把握→原因分析→是正処置の計画・実施→有効性の確認」
- 是正処置報告書は、原因と対策が必ず連動していることがポイント
- まずはテンプレートを参考に、自社の状況に当てはめて書くこと
対応に不安がある場合は、専門コンサルに相談する方法もあります。コンサル選びに迷う場合は、ISOコンサル会社のおすすめ5選で選び方のポイントをまとめていますので、あわせて参考にしてみてください。


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ここまでお疲れ様でした!是正処置は、一つひとつ手順を踏んでいけば、決して難しいものではありません。困ったときは、この記事のテンプレートをいつでも見返してくださいね。


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