「取引先からISO9001の取得を求められたけど、何から手をつければいいか分からない」
このような要求に焦りを感じたことはありませんか。
ISO9001を取得することで、今後の業務が円滑にまわり、新たなビジネスチャンスの獲得につながる可能性があります。
この記事では、これからISO9001を取得する予定の方を対象に、ISO9001の基本や取得までの流れについて解説します。
- ISO9001がどのような仕組みの認証で、何のためのものか
- 取得することで得られる具体的なメリット
- 取得にあたって知っておくべきデメリット・注意点
- 取得までの流れと、準備しておくべきもの・費用の目安
- 自社の規模でも取得できるのか、コンサルは必要なのかの判断材料
本記事を最後まで読んだら、初心者でもISO9001についての基本的な知識と取得までの流れについて理解でき、次に向けての行動が明確になります。

ISOの教科書 編集部
- ISOの教科書 編集部の案内役
- 東証プライム上場企業に勤務後、独立
- 中小企業の担当者向けに、取得・費用・運用をやさしく解説
【5ステップ】ISO9001を取得する流れ・手順
ISO9001の取得は、大きく分けて5つのステップで進みます。全体の流れをつかんでおくと、どこから手をつければよいか迷わずに済みます。
順番に見ていきましょう。
ステップ1. 事前準備
事前準備で行うべきこととして、次の2つです。
- ISO9001を取得する目的を明確にすること
- 責任者(管理責任者)を選任し、社内体制を整えること
責任者(管理責任者)とは?
管理責任者とは、品質マネジメントシステムが正しく運用されているかを社内で統括し、経営層と現場をつなぐ役割を担う人のことです。実際のところ、既存の業務と兼任しながら進める企業がほとんどです。
会社がISO9001を取得する理由として、「社会的信頼性の向上」や「取引先からの要請」などが挙げられます。
| ISO9001取得理由TOP5 | 割合 |
|---|---|
| 社会的信頼性の向上 | 44.4% |
| 経営管理体制の強化 | 37.9% |
| 取引先からの要請 | 36.9% |
| 業務効率化 | 26.8% |
| 公共工事入札 | 20.3% |
「取引先から求められたから」なのか「業務の質を底上げしたいから」なのかによって、登録範囲(対象部門・事業所)の絞り込み方や、取得までにかけられる期間の見積もりが変わります。
ステップ2. 品質マニュアル・規定文書の整備
取得目的と社内体制が固まったら、次は「品質マニュアル」をはじめとするルール文書を作成します。具体的には、「自社の仕事をどのような手順で進めるか」をまとめたルールブックになります。
一般的には次のような内容を記載します。
- 会社の概要と、ISO9001の対象とする業務範囲
- 品質に関する自社の方針(品質方針)
- 主な業務の流れ(プロセス)の概要
- 関連する手順書・記録の一覧
すでにある業務のやり方をそのまま書き写すのではなく、「ミスを防ぐにはどうすればいいか」「毎回同じ品質を保てるように、どう手順化すればいいか」という視点で、あらためて整理し直す作業になります。
ステップ3. 運用開始と内部監査の実施
文書が整ったら、実際にルールに沿って業務を運用していきます。日々の業務の中できちんと機能しているかを確認し、必要に応じて修正を重ねていきます。
文書を作って終わりにならないように、定期的に自社の社員自身がルール通りに運用できているかをチェックを行います。これが内部監査です。
具体的には、次のような流れで行います。
- いつ・誰が・どの部署を監査するかを計画する(自分の担当部署は監査しないのが基本)
- 品質マニュアルや手順書をもとに、確認項目をチェックリストにまとめる
- 現場の様子を見る・担当者に聞き取りをする・記録を確認する
- 結果を該当部署にフィードバックし、問題があれば改善する
問題が見つかった場合は、この段階で改善します。
ステップ4. 審査機関への申請〜一次審査・二次審査
運用の実績が積み上がったら、認証機関という審査を行う外部の専門機関に審査を申し込みます。
審査は一次審査と二次審査の2段階に分かれます。
- 一次審査:品質マニュアルや規程文書が、ISO9001の要求事項を満たしているかを確認する審査
- 二次審査:実際の現場で、文書通りに業務が運用されているかを確認する審査
審査で指摘事項が見つかった場合は、改善を行ったうえで認証に進みます。指摘があっても、すぐに不合格が確定するわけではありません。
ステップ5. 認証登録・登録後の維持審査
審査を通過すると、ISO9001の認証登録が完了します。ただし、一度取得すれば永久に認証されるわけではありません。
認証を維持するために、毎年「サーベイランス審査」という審査を受け、さらに3年ごとに「更新審査」を受ける必要があります。
具体的には、次のとおりです。
- サーベイランス審査:通常業務がルール通り運営されているかを短時間で確認する
- 更新審査:会社全体を対象に、3年間の運用実績を振り返りながら詳しく確認する
ISO9001の認証を正式に受けた後も、このようなメンテナンスが必要になります。
いそまる流れさえ把握できれば怖くありません!迷ったら「今どのステップにいるか」を確認しながら進めましょう。
ISO9001を取得する際に必要なもの
ここまでの流れとは別に、日々の運用の中で欠かせないのが「記録」です。ISO9001の審査では、ルール通りに運用されている証拠として、次のような記録の有無や中身が確認されます。
- 会議や打ち合わせの記録(議事録)
- 設備や工程の点検記録
- 社員教育・研修の実施記録
- 顧客とのやり取りやクレーム対応の記録
- 購買・仕入れ先の評価記録
「ルールを作った」だけでなく、「その通りに実行した証拠」を残しておくことが、審査を通過するうえで欠かせないポイントです。



ポイントは「ルールを作った証拠」を残すこと!日々の記録はこまめに取っておくと、審査前に慌てずに済みますよ。
ISO9001を取得する際にかかる費用
ISO9001の取得には、認証機関に支払う審査費用がかかります。目安として、次の通りです。
- 30万〜90万円程度(自力で取得する場合)
- 80万〜280万円程度(コンサルタント支援を受ける場合)
取得後も、毎年のサーベイランス審査(初回審査費用の約3分の1が目安)、3年ごとの更新審査(初回の約3分の2が目安)が発生するため、取得時だけでなく維持費も含めて予算を見込んでおく必要があります。
より詳しい費用の内訳は、ISO取得費用はいくら? で解説しています。





費用は自力かコンサル利用かで大きく変わります。まずは大まかな予算感をつかんで、社内での検討材料にしてくださいね。
ISO9001を取得する3つのメリット
ISO9001を取得することで、具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。代表的な3つを紹介します。
順番に紹介していきます。
対外的信用力の向上
ISO9001は国際規格であり、第三者機関の審査を通過した証です。新規の取引先開拓や、入札参加の条件をクリアする材料として役立ちます。
実際に、国土交通省は1996年度(平成8年度)から建設工事の入札にISO9001認証を活用する取り組みを始め、2004年度(平成16年度)以降は対象を全国の建設工事に拡大しています。地方自治体の入札でも、ISO9001の取得が評価項目の加点対象になっているケースがあります。
業務の標準化・特定の個人依存した体制の解消
人手不足を抱える中小企業では、各々の業務が特定の個人に依存しがちな傾向があります。ISO取得の過程で業務の手順が文書化されることで、こうした状態が解消されます。
業務の標準化を実施することで、次のようなメリットがあります。
- 新入社員教育にかかる期間が短縮される
- 担当者が急に休んでも他の社員が対応できるようになる
特定の個人依存した体制の解消は、中小企業庁の「中小企業白書」でも中小企業の重要な経営課題として挙げられており、人手不足が進む中小企業にとって特に効果を実感しやすいメリットだといえます。
顧客満足度・クレーム減少への効果
顧客満足度の向上やクレーム減少につながるメリットもあります。品質管理のプロセスが可視化されることで、ミスや発生に気づきやすくなります。
ISO9001では、顧客からの苦情や不具合を記録し、原因を分析したうえで再発防止策を講じることが求められます。この仕組みが定着することで、同じ理由によるクレームが繰り返されにくくなり、結果として顧客満足度の向上につながるケースがあります。



信用力アップだけでなく、社内の仕組みづくりにも効果あり!自社に合ったメリットを意識しながら読み進めてみてください。
ISO9001を取得するデメリット
メリットがある一方で、取得前に理解しておきたいデメリットもあります。
一つずつ見ていきましょう。
取得・維持にかかるコストと工数
審査にかかる費用は次のとおりです。
- 30万〜90万円程度(自力で取得する場合)
- 80万〜280万円程度(コンサル支援を受ける場合)
さらに取得後にも継続的にかかる費用が発生します。
- 毎年のサーベイランス審査(初回審査費用の約3分の1が目安)
- 3年ごとの更新審査(初回の約3分の2が目安)
費用以外にも、文書整備や内部監査の実施などで、社内の人的リソースが継続的に必要になります。
形骸化のリスク
形骸化とは、審査に通ることが目的化してしまい、日々の実務とルールが乖離してしまうことです。「書類のための仕事」にならないよう、円滑な運用が求められます。
ISO9001や関連規格が「意味がない」と言われる理由や、実際に認証を返上した企業の実態については、こちらの記事 で詳しく解説しています。





コストや形骸化のリスクはありますが、事前に知っておけば対策できます。「知らずに困る」を防ぐための情報として押さえておきましょう。
ISO9001取得企業の実態|会社の規模が小さくても取得できる?
「小さな会社の規模でも本当に取得できるのか」と気になる方も多いのではないでしょうか。実際のデータをもとに解説します。
企業規模別の取得傾向
ISO9001の要求事項自体には、企業規模による制限はありません。
従業員数十名規模の中小企業でも取得実績は多数あります。JAB(日本適合性認定協会)によると、認証を受けている組織は21,971件(2026年08月12日現在)にのぼり、大企業だけでなく幅広い規模の企業に浸透していることがうかがえます。
業種別の取得傾向
製造業が全体の約6割、次いで建設業が占めています。
製造業では、大手企業や官公庁がサプライヤー選定の条件としてISO9001を求めるケースが多く、取引先の品質管理体制を個別に監査する代わりに、第三者認証を「品質保証のパスポート」として活用する狙いがあります。
また、建設業では、国土交通省が公共工事の入札における経営事項審査(経審)でISO9001取得を加点対象としており、多重下請け構造の中で品質管理体制を客観的に証明する手段として定着しています。
取引先からの要求や入札条件になりやすい業種ほど、普及率が高い傾向にあります。
※この割合はJABの一次データではなく、二次情報(業界コラムサイト)に基づく参考値です。



「うちの規模じゃ無理かも…」と思う必要はありません!実際に幅広い規模の企業が取得していますよ。
ISO9001とは何か?
ここで改めて、ISO9001がどのような規格なのかを整理しておきましょう。
ISO9001の定義
ISO9001は、ISO(国際標準化機構)が策定した「品質マネジメントシステム(QMS)」の国際規格です。
料理に例えるなら、ISO9001は「カレーライスを美味しく安定して作るための、世界共通のレシピの型」のようなものです。お店によって使うスパイスや具材は違っても、「材料の下ごしらえの仕方」「煮込む手順」「衛生管理」など、品質を保つための骨組みは共通しています。
ISO9001も同様に、業種を問わず「品質を保つための仕組みの型」を定めた規格です。飲食業に限らず、建設業や製造業、サービス業など、あらゆる業種で取得できます。
何のための規格か
製品やサービスの品質を一定水準に保つための、社内の仕組みづくりを目的とした規格です。
つまり、担当者の経験や勘に頼るのではなく、「誰が作っても、同じ品質のカレーが作れる状態」を目指す仕組みです。
認証の仕組み
ISO9001そのものは規格(ルールブック)であり、自社で「ルールに沿って運用しています」と宣言するだけでなく、外部機関のお墨付きを得られる点が特徴です。
料理店で例えるなら、保健所の立入検査に近いイメージです。「うちのカレーは衛生的に作っています」と自分で言うだけでなく、第三者(審査機関)に実際の調理現場を確認してもらって、初めて「認証」となります。



難しく感じたら、カレーのレシピを思い出してみてください。「誰が作っても同じ品質」を目指す仕組み、それがISO9001です。
ISO9001を取得する際によくある質問
ここでは、ISO9001を取得する際によく聞かれる質問をまとめます。
- ISOは自力で取得可能か?
-
可能です。
ただし、文書整備や内部監査などの専門知識を求められる工程もあるため、ある程度の知識は必要です。
- ISOを取得している企業はどれくらい?
-
JAB(日本適合性認定協会)認定分だけで21,971件(2026年08月12日現在)です。
- ISOの審査の合格率はどれくらい?
-
合格率は公表されていません。
指摘事項が見つかった場合も、改善を行った上で認証に至るのが一般的です。仮に一度で認証に至らなくても、再度審査を受けることができます。
- ISOはいつまでに取得するのがベストでしょうか?
-
早めに準備するのがおすすめです。
取引先の要請や入札の締め切りなど、必要なタイミングから逆算するのが基本です。申し込みから認証まで数ヶ月かかることもあります。
- ISOは更新や維持にどれくらいの費用がかかるか?
-
毎年のサーベイランス審査は初回の約3分の1、3年目の更新審査は約3分の2が目安です。
- 小規模の会社だけど、ISOを取得するメリットはあるか?
-
あります。
要求事項に規模制限はなく、数十名規模でも取得実績は多数あります。信用力向上や業務標準化の効果は、人手が限られる小規模企業ほど実感しやすい面もあります。
まとめ:ISO9001は、正しい流れを踏めば企業規模を問わず取得できる認証
ISO9001は、正しい流れを踏めば企業規模を問わず取得できる認証です。ここまでの内容を振り返っておきましょう。
- ISO9001は品質マネジメントシステムの国際規格で、第三者機関の審査によって認証される
- メリットは対外的信用力の向上・業務標準化・顧客満足度の向上
- デメリットは費用・工数負担と形骸化のリスク。ただし仕組み次第で回避できる
- 取得までは事前準備→文書整備→内部監査→審査→登録の流れで進む
- 費用は自力30万〜90万円、コンサル利用80万〜280万円程度が目安
- 企業規模を問わず取得実績があり、自社の規模がネックになることは基本的にない
- 自社対応が難しい場合はコンサルに相談する選択肢もある
自社での対応に不安がある場合は、専門コンサルに相談する方法もあります。コンサル選びに迷う場合は、ISOコンサル会社のおすすめ5選 で選び方のポイントをまとめていますので、あわせて参考にしてみてください。



ここまでお疲れ様でした!
次の一歩に迷ったら、専門家に相談するのも一つの手ですよ!


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