「ISOはもう時代遅れではないか」「トヨタのような大企業も返上したらしい」
ISOの更新時期が近づくと、社内でこうした声が出ます。
結論から言うと、ISO9001・ISO14001の認証を返上した企業は実在します。
企業自身が自社サイトで公表しているものだけで、26社確認できました。
ただし、その多くは「全社をやめた」わけではありません。 一部の工場や部門だけ認証を終了した企業や、国内だけ返上して海外は継続している企業もあるのも事実。
「意味がなかったから返上した」と公表している企業は、26社のうち1社もありませんでした。
いそまる本記事の事例は、1社ずつ企業自身の公式発表にあたって確認しています。まとめサイトや個人ブログを情報源にしたものは含めていません。
\ISO運用の見直しを相談したい方へ/
ISOをやめた・返上した企業の一覧【26社】
ISOを返上したことを公表している実例を26社確認しました。
企業の発表は「発表日」と「実際に返上した日」がずれることがありますので、注意してください。※数か月先の返上を前もって告知するため。
ISO9001を返上した企業の一覧(19社)
品質の認証であるISO9001には、返上の公表例が多数あります。
| 企業名 | 返上した範囲 | 返上日 | 返上後の管理・他規格の扱い | 出典(発表日) |
| 和弘食品 | 全社 | 2019年6月1日 | FSSC22000へ移行 | 公式発表(2019年5月31日) |
| JMAS | 全社 | 2020年3月31日 | 統合マネジメントシステム方針のもと自社で継続 | 公式発表(発表日の記載なし) |
| ヒキタ工業 | 全社 | 2021年1月末日 | ISO9001に準拠した独自の品質マネジメントシステム | 公式発表(2021年1月末日) |
| 塚腰運送 | 全社(9001+14001+45001) | 記載なし | 動態管理システム導入・内部監査を年57回に拡大 | 公式発表(2021年6月21日) |
| 日東CTセンター | 全社 | 2022年6月12日 | ISO9001の考え方を継承。ISO/IEC17025も2026年3月末に返上 | 公式発表(2022年6月13日) |
| NSP | 全社(9001+14001+27001+45001) | 2022年11月30日 | 独自の品質・情報セキュリティ・環境・労働安全衛生の各方針 | 公式発表の保存版(2022年11月30日) |
| 朝日インテック | 全社 | 2023年7月1日 | 医療分野のISO13485は維持 | 公式発表(2023年6月16日) |
| 日本街路灯製造 | 全社(9001+14001) | 2023年8月 | 自社独自の品質方針・環境方針 | 公式発表(2023年9月21日) |
| 日本リーテック | 送電線部門のみ | 2024年1月 | 記載なし | 公式発表(発表日の記載なし) |
| 大和化成 | 全社 | 2024年3月末日 | ISO9001に準拠した形で運営継続 | 公式発表(2024年3月29日) |
| ジェントス | 全社 | 2024年4月 | 公表資料に詳細な記載なし | 公式発表(発表日の記載なし) |
| 室本鉄工 | 全社 | 2024年7月 | 「品質方針」に基づく品質管理制度へ移行 | 公式発表(2024年8月19日) |
| 大原電業 | 全社(9001+14001) | 2024年8月 | 品質方針・環境方針に基づきISO管理手法を継続 | 公式発表(発表日の記載なし) |
| 東海物産 | 全社 | 2025年1月24日 | FSSC22000は継続 | 公式発表(2024年12月26日) |
| 竹内産業 | 全社 | 2025年1月29日 | FSSC22000へ移行 | 公式発表(2025年1月20日) |
| 三山製作所 | 全社 | 2025年3月31日 | ISO9001の考え方を継承 | 公式発表(2025年3月31日) |
| カケンジェネックス | 全社 | 2025年7月 | 公表資料に詳細な記載なし | 公式発表(発表日の記載なし) |
| 伯方塩業 | 全社(9001+14001) | 2025年10月19日 | 食品安全のISO22000は維持・更新 | 公式発表(2025年10月20日) |
| 昭和電機産業 | 全社 | 2010年4月 | 独自の「品質方針」のもと改善活動を継続 | 同社のISO14001返上告知内に記載(2018年9月13日) |
ISO14001を返上した企業の一覧(13社)
ISO14001は、環境報告書やお知らせで返上を公表する企業が多い規格です。
| 企業名 | 返上した範囲 | 返上日 | 返上後の環境管理 | 出典(発表日) |
| 昭和電機産業 | 全社 | 2018年9月14日 | 独自に制定した環境方針 | 公式発表(2018年9月13日) |
| AGS | グループ全体 | 2018年11月末 | 「AGSグループ環境方針」に基づき考え方を継承 | 公式発表(発表日の記載なし) |
| 三洋化成工業 | 国内のみ(名古屋・京都・鹿島工場と国内関係会社。海外は継続) | 2020年度 | 自社で運用するマネジメントシステム | 公式発表(2020年10月26日) |
| 塚腰運送 | 全社(3規格同時) | 記載なし | CO₂排出量の可視化・内部監査を年57回に拡大 | 公式発表(2021年6月21日) |
| JR西日本 | 一部拠点のみ(車両所4か所) | 2022年5月〜2023年3月 | ISO14001に準拠した独自の環境マネジメントシステム | プレスリリース(2022年4月27日) |
| NSP | 全社(4規格同時) | 2022年11月30日 | 独自に制定した環境方針 | 公式発表の保存版(2022年11月30日) |
| 日本街路灯製造 | 全社(9001+14001) | 2023年8月 | 自社独自の環境方針 | 公式発表(2023年9月21日) |
| LEOC | 全社 | 2024年1月18日 | SDGsへの取り組みに移行 | 公式発表(2023年11月2日) |
| 大原電業 | 全社(9001+14001) | 2024年8月 | 「環境方針」に基づきISO管理手法を継続 | 公式発表(発表日の記載なし) |
| シモジマ | 東京本社 | 2024年9月30日 | サステナビリティ委員会へ移行 | 公式発表(2024年9月2日) |
| 金子農機 | 全社 | 2024年11月30日 | ISO活動で培った管理手法・知見を活かし自主運用へ | 公式発表の保存版(2024年6月17日) |
| 和光薬品 | 全社 | 2025年2月 | 公表資料に記載なし | 公式発表(2025年2月25日) |
| 伯方塩業 | 全社(9001+14001) | 2025年10月19日 | 培ってきた品質管理・環境管理の体制を基盤に運用 | 公式発表(2025年10月20日) |
2つの表で企業名が重なっているのは、9001と14001の両方を返上した6社です。
- 昭和電機産業
- NSP
- 日本街路灯製造
- 大原電業
- 伯方塩業
- 塚腰運送
19社+13社から重複する6社を差し引いて、実数は26社となります。
他の規格は残している企業が5社ある
2つの表で注目するべきは、ISOをすべてやめたわけではない企業がある点です。
| 企業 | 返上した規格 | 残した・移った規格 |
| 朝日インテック | ISO9001 | ISO13485(医療機器) |
| 伯方塩業 | ISO9001・ISO14001 | ISO22000(食品安全) |
| 東海物産 | ISO9001 | FSSC22000(食品安全) |
| 和弘食品 | ISO9001 | FSSC22000(食品安全) |
| 竹内産業 | ISO9001 | FSSC22000(食品安全) |
食品会社3社がFSSC22000へ移っている点は、業界の事情がはっきり出ています。取引先から求められる規格が変わったとき、企業は認証をやめるのではなく、乗り換える判断をしています。
つまり「ISOをやめた」のではなく、「自社の事業に必要な規格だけを残した」というのが実態です。
もう一点、確認できた26社の返上はすべて、自主返上でした。認



証機関から取り消された事例は、今回の調査では1件も見つかりませんでした!
「全社の返上」と「一部だけの返上」はまったく違う
ネット上で「◯◯がISOをやめた」と紹介されていても、全社で返上したとは限りません。
確認できた26社を範囲で分けると、次のようになります。
| 区分 | 社数 | 該当する企業 |
| 全社での返上 | 23社 | AGS・室本鉄工・伯方塩業 ほか |
| 一部の拠点・部門のみ | 2社 | JR西日本(車両所4か所)/日本リーテック(送電線部門) |
| 認証範囲の縮小 | 1社 | 三洋化成工業(国内のみ・海外は継続) |
※シモジマは、認証の登録範囲が「東京本社」であり、その範囲全体を返上しています。
たとえばJR西日本は、多数の事業所を持つ同社のうち、車両所4か所の認証だけを終了しています。
| 対象拠点 | 返上した時期 |
| 金沢総合車両所 | 2022年5月 |
| 博多総合車両所 | 2022年8月 |
| 網干総合車両所 | 2022年12月 |
| 吹田総合車両所 | 2023年3月 |
公表資料によると、規模の大きい現業機関をモデル職場として認証を取得したのち、そのノウハウを活かしてISO14001に準拠した独自の環境マネジメントシステムを構築し、全社へ展開したとされています。
その仕組みが定着したと判断して、4拠点の認証を終了しました。
各拠点の認証更新時期に合わせて順次返上している点にも注目できます。行き当たりばったりではなく、計画的な移行だったことが読み取れます。
日本リーテックも同様に「送電線部門のみ」と範囲を明記しています。
三洋化成工業は名古屋・京都・鹿島の国内3工場と国内関係会社のみ返上し、海外の事業所ではISO14001を継続しています。(出典:三洋化成工業の公式発表・2020年10月26日)



他社の事例を自社の参考にするときは、まず「全社なのか、一部なのか」を確認してください。ここを見落とすと判断を誤ります。
なぜ、トヨタはISOを返上したのか?
2026年7月時点の公的な登録簿では、トヨタ自動車はISO認証を維持していることが確認できます。
順に確認していきます。
現在の登録状況
日本適合性認定協会(JAB)が公開している認証組織検索で、2026年8月3日に確認した結果です。
| 規格 | 登録が確認できた範囲 | 認証機関 |
| ISO14001(環境) | 本社工場/元町/堤/高岡/田原/上郷/下山/衣浦/貞宝/三好・明知/開発拠点の11拠点 | JARI-RB |
| ISO9001(品質) | 本社 パワートレーンカンパニー | JUSE-ISOセンター |
グループ各社も同様です。トヨタ自動車東日本・トヨタ自動車九州・トヨタ自動車北海道・トヨタ車体では、ISO14001の登録が現行のものとして確認できました。
デンソー・アイシン・豊田自動織機についても、ISO9001またはISO14001の登録があります。
つまり、「トヨタグループはISO認証を一切持っていない」という理解は、公的な登録データとは一致しません。



組織や認証機関の意向により登録簿に表示されない場合があるため、この一覧がすべての認証を網羅しているとは限らないのです。
1998年の時点で「全工場で取得する」と公表していた
返上どころか、当時のトヨタは全社での取得を進めていました。
トヨタ自動車の環境部に所属する担当者が、1998年に学術誌へ寄稿した記事があります。
1996年に高岡・堤工場および英国拠点が、1997年に元町・田原工場およびカナダ・タイ拠点がISO14001の外部認証を取得した。1997年には、国内の全工場・事業所と海外の主要事業体を対象に、1999年末までに外部認証を取得することを決定した。
出典:岩井哲郎(トヨタ自動車株式会社 環境部)「トヨタ自動車におけるISO14001への取組み」『環境技術』Vol.27 No.2(1998年)/J-STAGE
この記事はISO14001のみを扱っており、返上に関する記述は一切ありません。
「エンジン部門が返上した」説の一次資料は確認できなかった
「1997年にトヨタのエンジン部門がISO9001を取得し、2年後に返上した」という説を、複数のサイトで見かけます。
この説の一次資料を探しましたが、確認できませんでした。
| 検証したこと | 結果 |
| 各サイトが示している出典 | いずれも示されていない |
| 根拠として挙げられる雑誌記事(1999年10月25日号の特集) | 国立国会図書館サーチ・CiNii Researchで該当なし |
| 唯一の言及元 | Q&Aサイトの匿名投稿1件(根拠の記載なし) |
いずれも2026年8月3日時点の確認結果です。
二次情報のなかでも見解は分かれています。この説を断定的に書いているサイトがある一方、「完全な認証返上は事実として確認されていません」と明記しているサイトもあります。
本記事では「返上はなかった」とは断定しません。
確認できたのは、
- 現在の登録簿では認証が維持されていること
- 返上を示す一次資料は見つからなかったこと
この二つです。
トヨタの事例を中小企業に当てはめられない
大企業と中小企業では、管理能力を示す方法が異なります。
大企業には、次のような強みがあります。
大企業の強み
- 独自の品質・環境管理制度が整っている
- 社内監査や評価の仕組みを自前で持っている
- 長年の取引実績と知名度がある
- 取引先へ管理状況を直接説明できる
- 管理体制を維持するための人員と予算がある
一方、中小企業ではISO認証そのものが、新規取引・入札・サプライヤー登録における信用の証明になっている場合があります。



「大企業が返上したから自社も返上してよい」と考えるのは危険です!
企業がISOをやめる・返上する理由
「意味がなかったから返上した」と公表している企業は、26社のうち1社もありませんでした。
まず、各社が公表している理由を、発表資料の言葉のまま並べて見ます。
多数派の理由は「社内に浸透・定着したから」
返上した企業の公表理由には、はっきりした共通点があります。
| 企業 | 公表されている返上理由(原文) | 出典 |
| AGS | 「環境マネジメントシステムの運用がグループ内に浸透し、環境問題に対する社員の意識が十分高まったと判断したこと」 | 公式発表 |
| 昭和電機産業 | 「ISO認証取得の導入目的が社内に浸透し、且つ、その目的を達成できたと判断し」 | 公式発表 |
| 三洋化成工業 | 「規格に則した事業活動の社内浸透、管理レベルの飛躍的な向上に加え、従業員の意識も十分に高まったと判断」 | 公式発表 |
| NSP | 「各規格の考え方・運用方法が全社に浸透し、仕組みとして成熟したと判断したため」 | 保存版 |
| LEOC | 「環境マネジメントシステムの運用が社内に浸透・定着して社員の意識も十分に高まったものと判断し」 | 公式発表 |
| シモジマ | 「23年間にわたる運用により、継続的な環境改善の体制が構築され、一定の効果が得られたと判断し」 | 公式発表 |
| 金子農機 | 「20年に及ぶ環境マネジメントシステムの運用により、社員の環境活動に対する意識が高まり、継続的環境改善の維持、向上させる体制が構築でき、導入の目的が社内に浸透したと判断し」 | 保存版 |
| 和光薬品 | 「規格に則した事業活動の社内浸透、管理レベルの向上に加え、従業員の意識も十分に高まったと判断し」 | 公式発表 |
| 日本リーテック | 「品質マネジメントシステムが成熟した仕組みとして浸透し、確実に定着したと判断した」 | 公式発表 |
| JMAS | 「品質マネジメントシステムの運用が社内に浸透し、確実に定着したと判断し」 | 公式発表 |
| 朝日インテック | 「社内システムを見直した結果、自主的なシステムの構築により今までと同等レベルの運用が可能であると判断し」 | 公式発表 |
| 伯方塩業 | 「品質・環境のマネジメントシステムの運用が事業活動に定着し、自社での運用管理が可能と判断し」 | 公式発表 |
多くの企業が「浸透した」「定着した」「目的を達成した」と説明しています。
共通するのは、「もう自力で回せるようになったから、外部からの確認を外した」という理由です。
つまりこれらの返上は、運用が成熟した結果であって、制度そのものを否定した判断ではありません。



「ISOは意味がないから、みんなやめている」という受け取り方とは大きく異なります!
「維持コスト」を理由に返上した企業も実在する
「全社が成熟を理由にしている」と言い切ることはできません。
26社の発表を1件ずつ読むと、維持にかかる手間・時間・費用をはっきり理由に挙げた発表が2件ありました。
ISOの認証を維持するためだけの余計な手間(書類作成業務)と時間(会議)とコスト(認証維持費用)を省き、浮いた時間とお金を、本来の安全・品質・環境に対するパフォーマンス向上のために注力していこうということ
出典:塚腰運送「ISO認証返上後の安全・品質・環境に関する取り組み及びその仕組みにつきまして」(2021年6月21日発表)
同社は返上後に内部監査を年57回まで拡大し、動態管理システムの導入やCO₂排出量の可視化を進めると公表しています。認証をやめる代わりに、中身の管理は強化するという判断です。
もう1件は、日東CTセンターがISO/IEC17025(試験所認定)を返上した際の発表です。
近年の試験依頼件数の変動および業務体制の見直しに伴い、認定維持に必要となる運用・管理コストとのバランスを総合的に勘案した結果、返上が適切であると判断
出典:日東CTセンター「ISO/IEC 17025『試験所認定』返上のお知らせ」(2026年4月1日発表・返上日は2026年3月31日)



「浸透したから」が多数派なのは事実ですが、コストを理由に挙げた企業も実在します。自社の判断材料にするなら、どちらの型に近いのかを見極めてください。
取得した目的がなくなった・取引先から求められなくなった
ISO認証は、取得そのものが目的ではありません。
取得した当時の目的がなくなると、企業は返上を検討しやすくなります。
返上したくなる理由
- 認証を活用していた取引が終了した
- 契約条件からISO認証が外れた
- 業界内で別の評価制度が使われるようになった
- 事業内容が変わり、認証の対象が合わなくなった
ただし注意が必要です。
現在の取引先が求めていなくても、将来の新規取引や入札で必要になる可能性があるからです。
短期的な事情だけで判断すると、後から取引の条件を満たせないことに気づく場合があります。
維持費用と社内工数の負担
維持にかかるのは審査費用だけではありません。
内部監査の準備、記録の収集、規程の更新といった社内工数も発生します。
費用が読みにくい理由のひとつが、認証機関が審査料金を公表していないことです。国内最大手のJQA(日本品質保証機構)も、審査費用は料金表ではなく個別の見積もり対応です。※出典:JQA「お見積り依頼」
一方で、審査に必要な日数は国際基準で定められています。
国際認定機関フォーラム(IAF)が発行する「IAF MD 5」は、ISO9001の初回審査に要する日数を実効要員数ごとに示しています。
| 実効要員数 | ISO9001の初回審査に要する日数 |
| 1〜5名 | 1.5日 |
| 6〜10名 | 2日 |
| 16〜25名 | 3日 |
| 26〜45名 | 4日 |
| 46〜65名 | 5日 |
| 86〜125名 | 7日 |
維持にかかる工数も同じ文書に定めがあります。サーベイランス審査は年間で初回審査の約3分の1、更新審査は約3分の2が目安です。
サーベイランス審査(維持審査)とは
認証を維持できているかを確認するため、通常は毎年行われる審査です。認証機関のJMAQA(日本能率協会 審査登録センター)も、サーベイランス審査は毎年、更新審査は取得から3年目に必要と案内しています。
つまり、日数の基準は公的に決まっている一方、1日あたりの単価が公開されていないため、総額が読みにくいという構造です。
費用の内訳と相場は、別記事「ISO取得費用はいくら?規格別・規模別の相場と内訳」で詳しく解説しています。
情報セキュリティの規格に絞って知りたい場合は、ISMS認証(ISO27001)の取得費用の相場で、審査費用・コンサル費用・維持費を3年の総額で整理しています。


独自の管理体制への移行や組織再編
返上後に、環境や品質の管理そのものをやめた企業はありませんでした。
確認できた26社のうち、22社が代わりの仕組みを明示しています。
| 移行先 | 企業 |
| 独自の環境・品質マネジメントシステム、または各種方針 | JR西日本/AGS/昭和電機産業/三洋化成工業/NSP/JMAS/日本街路灯製造/大和化成/室本鉄工/大原電業 ほか |
| サステナビリティ委員会 | シモジマ |
| SDGsへの取り組み | LEOC |
| 培った管理手法・知見を継続 | 金子農機 |
| 公表資料に記載なし | 和光薬品/ジェントス |
シモジマとLEOCの例は特徴的です。環境活動をやめたのではなく、看板を掛け替えて継続しています。
組織再編にともなう返上もあります。工場や事業所の統廃合、事業からの撤退、グループ共通制度への統合によって、認証の対象そのものがなくなるケースです。
ISOが「時代遅れ・意味ない」と言われる4つの理由
規格が古いのではなく、運用のしかたが問題になっている場合がほとんどです。
制度として廃れているわけでもありません。日本適合性認定協会(JAB)の集計では、2024年12月末時点でJAB認定を受けた35の認証機関だけで、ISO9001が25,515件、ISO14001が14,254件の認証が維持されています。
これに加えて、JAB以外の認定機関による認証機関からも、ISO9001が13,489件、ISO14001が6,705件が報告されています。
順に見ていきます。
書類のための仕事になっている(形骸化)
よく挙げられるのが、マニュアルや記録が「審査のためだけ」になっているケースです。
現場は普段のやり方で動き、審査前にだけ帳尻を合わせる。これでは品質は良くならず、「無駄な仕事」と感じて当然です。
具体的には、こうした状態が起きています。
形骸化されるケース
- 現場の手順書とは別に、誰も見ない「審査用マニュアル」がある
- 審査の前に、過去の記録をさかのぼって作成している
- 是正処置が毎回「以後注意する」で終わっている
- マニュアルが分厚すぎて、新人が読んでも作業できない
意外に思われるかもしれませんが、ISO9001は「分厚い手順書」を求めていません。
2015年版の規格は、箇条7.5「文書化した情報」で、必要な情報を必要な分だけ管理すればよいと定めています。
文書化した情報とは?
ISO9001(箇条7.5)で管理が求められる手順書や記録などの情報のことです。
必要なものを必要な分だけ管理すればよく、分厚いマニュアルは規格の要求ではありません。
是正処置とは?
問題(不適合)が起きたとき、その原因を取り除いて再発を防ぐための対応です。
「以後注意する」で終わらせず、原因の特定までを行います。
取得・維持のコストが効果に見合わないと感じる
効果が数字で見えにくいため、費用と工数だけが目立ちます。
審査費用・更新費用・社内工数を合計すると、負担は小さくありません。
しかも取得して終わりではなく、毎年のサーベイランス審査と3年ごとの更新審査が続きます。
費用の詳しい内訳は、前章の「維持費用と社内工数の負担」で解説したとおりです。
「認証の維持」が目的にすり替わっている
本来の目的は、品質や信頼の向上です。
それが「認証マークを維持すること」自体がゴールになると、改善は止まります。
「去年と同じ書類を、今年も作る」だけになっていないか。ここが分かれ目です。
内部監査が「指摘ゼロ」の形式チェックになっている
内部監査が「チェックリストを埋めるだけ」になると、改善につながりません。
規格(JIS Q 9001:2015 箇条9.2)は、内部監査に対して2つの確認を求めています。
- 適合性:規格や自社ルールに合っているか
- 有効性:その仕組みが狙いどおり機能しているか
「指摘ゼロ」を目標にすると、後者の「有効性の確認」がまるごと抜け落ちます。本来は、社内の弱点を見つけて直すための仕組みです。
ISOを取得しない大企業がある理由
「大企業はISOを取らない」という理解は、正確ではありません。
実態は、全社で一律に取得するのではなく、必要な拠点や事業だけが取得しているという形です。
トヨタの例がそれにあたります。ISO14001は国内11拠点で、ISO9001は本社パワートレーンカンパニーで登録が確認できました。
大企業が全社的な取得に踏み切らない理由は、次の3つに整理できます。
大企業がISOを取得しない理由
- 独自の品質管理体系が確立しており、外部認証がなくても品質を担保できる
- ブランド力と取引関係が強固で、認証がなくても取引に支障が出ない
- 主要顧客や業界が、全社一律の認証を必須としていない
ここで大事なのは「見る側」の視点です。
大企業は全社での取得をしない一方で、発注先・取引先にはISOを求めることが珍しくありません。
たとえば建設業では、経営事項審査においてISO9001とISO14001の認証取得がそれぞれ5点、両方の取得で最大10点として評価されます。この加点制度は2011年4月の改正で追加され、2023年1月の改正でも廃止されずに続いています(出典:建設業情報管理センター。
一方で国土交通省は、公共工事でISO9001を活用する方針を示しつつ、次のように明記しています。
ISO9001の認証取得を入札参加条件としません。
出典:国土交通省「ISO9001認証取得を活用した工事について」
つまり、必須要件ではないが、点数として評価されるという位置づけです。



裏を返せば、独自の管理体制も、それを信用させるブランド力もまだ持たない中小企業ほど、認証が取引や信頼の「入場券」として効くということです!
ISOを返上する前に確認すべき7つのこと
返上の判断は、審査費用だけでは決められません。 取引・入札・返上後の体制・再取得の費用まで確認してください。
順に確認していきます。
取引先や顧客から認証を求められていないか
担当者の記憶だけで判断しないでください。
次の資料を実際に確認します。
- 取引基本契約書・品質保証協定
- 顧客仕様書・環境調達基準
- サプライヤー登録の条件
- 顧客から届いた調査票
営業部門や契約担当者にも確認してください。取引開始時の条件は、ISO担当者が把握していない場合があります。
入札や新規取引の条件になっていないか
既存の取引だけでなく、将来の事業機会も確認します。
- 公共入札の参加資格
- 大手企業のサプライヤー登録
- 海外企業との取引条件
- 提案依頼書の参加条件
前章で触れたとおり、建設業では経営事項審査でISO9001・ISO14001がそれぞれ5点として評価されます。
返上すればこの点数を失います。
返上後の管理体制を構築できるか
認証を返上しても、品質や環境の管理は続ける必要があります。
実際、確認できた26社のうち22社が、返上後の代わりの仕組みを明示していました。返上を検討するなら、同じように次の点を決めておく必要があります。
- 誰が品質・環境管理を担当するのか
- 内部監査を継続するのか
- 不適合が発生したとき、どう改善するのか
- 顧客へ何を根拠に管理体制を説明するのか
代わりの仕組みがない状態で認証だけをやめると、管理体制そのものが弱くなります。
顧客監査や確認作業が増えないか
ISO認証は、第三者機関が管理体制を審査した証明として使われています。
返上すると、取引先によっては次の対応が増える可能性があります。
- 顧客による現地監査
- 品質・環境調査票への回答
- 管理規程や記録の提出
- 定期的な管理状況の報告
審査費用がなくなっても、顧客ごとの監査対応が増えれば、担当者の負担は減りません。
営業やWebサイトへの影響がないか
ISO認証を営業や広報に使っている場合、返上後は表示を見直します。
- 会社案内・営業資料・提案書
- Webサイト・名刺・採用資料
- 製品カタログ・展示会資料
- 認証マークの掲載
返上後も認証取得中と誤解される表示を残さないよう注意してください。
再取得の費用を把握しているか
返上後に新しい取引先から求められた場合、再取得が必要になります。
再取得では、規程・手順書の再整備、内部監査、マネジメントレビュー、審査対応が改めて発生します。
審査日数は前章のIAF MD 5の基準どおりに算定されるため、規模が変わっていなければ初回と同等の工数がかかります。
一度返上してから再取得するほうが、維持を続けるより高くつく可能性があります。
運用改善や認証範囲の縮小で解決できないか
返上は、選べる手段のひとつにすぎません。
ISOが負担になっている場合、次のような選択肢があります。
- 不要な書類を減らす
- ISO専用の業務を通常業務へ統合する
- 既存システムのデータを記録として活用する
- 内部監査の方法を見直す
- 認証範囲を縮小する
- 複数の認証を統合する
- 審査機関を変更する
実際、今回確認した26社のうち3社は「全部やめる」を選んでいません。
JR西日本は車両所4か所だけ、日本リーテックは送電線部門だけ、三洋化成工業は国内だけを対象にしています。必要な範囲は残したまま、負担の大きい部分だけを外すという判断です。
大切なのは、認証そのものが不要なのか、いまの運用に無駄があるだけなのかを切り分けることです。
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一社だけでなく複数の会社を比較して決めたい場合は、別記事「ISOコンサルの選び方とおすすめ比較【中小企業向け】」もあわせてご覧ください。


ISOをやめた・返上した企業に関するよくある質問
- ISO14001をやめた企業はどこですか?
-
企業が自ら公表している例として、JR西日本(車両所4か所・2022〜2023年)、三洋化成工業(国内のみ・2020年度)、AGS(2018年)、シモジマ(2024年)などがあります。
本記事の前半で13社を出典リンクつきで一覧にしています。ただし全社で返上した企業と、一部の拠点だけ終了した企業が混在している点にご注意ください。
- ISO9001を返上した企業もありますか?
-
あります。
日本リーテック(送電線部門のみ・2024年)、朝日インテック(2023年)、室本鉄工(2024年)など19社を確認しました。ISO14001と比べると公表例は見つけにくい傾向がありますが、存在しないわけではありません。
- トヨタはISO9001も返上していますか?
-
2026年7月時点のJAB認証組織検索では、トヨタ自動車の本社パワートレーンカンパニーでISO9001の登録が確認できました。
ISO14001も国内11拠点で登録があります。「エンジン部門が返上した」という説については、一次資料を確認できませんでした。
- ISOを返上すると取引先への連絡は必要ですか?
-
契約や取引条件にISO認証が含まれている場合は、事前の確認や連絡が必要になる可能性があります。
営業資料やサプライヤー登録で認証を利用している場合も、返上前に取引先へ確認してください。
- ISOを返上した後でも再取得できますか?
-
再取得は可能です。
ただしマネジメントシステムの整備、内部監査、マネジメントレビュー、認証審査が改めて必要になります。維持を続ける場合より費用や工数が増える可能性があるため、返上前に検討してください。
- ISO認証がなくても品質・環境管理はできますか?
-
できます。
実際、今回確認した26社のうち22社が、返上後も独自の方針や管理システムで活動を継続しています。ただし認証を返上する場合は、代わりの管理体制と、取引先へ管理能力を説明する方法を用意する必要があります。
- ISOをやめると、それまでの記録や仕組みはどうなりますか?
-
社内で作った手順書・記録・改善の仕組みはそのまま残り、自社の運用として継続できます。
失われるのは、外部審査による定期的な点検機会と、第三者認証としての証明力です。取引先や入札で証明力が求められている場合は影響が出ます。
- ISOを取得していない大企業はありますか?
-
あります。
独自の品質管理体系を持ち、取引先から認証を求められていない企業では、全社的な取得をしない判断もあります。ただしこれは自社の管理体制が対外的に信用されていることが前提で、中小企業にそのまま当てはまるものではありません。
まとめ:返上を判断するためのチェックリスト
ISOをやめた企業は実在します。ただし、その中身は「制度の否定」ではありませんでした。
今回確認できた26社から読み取れることは、次の3点です。
本記事のまとめ
- 全社で返上したのは23社、一部の拠点・部門だけ、範囲を縮小したのが3社
- 返上理由は全社ほぼ共通で「社内に浸透・定着した」。「意味がなかった」と公表した企業は1社もない
- 22社が返上後の代わりの仕組みを明示している。管理そのものをやめた企業はない
自社が返上を検討するなら、次の3点を確認してください。
判断チェックリスト
- 取引先・入札の条件にISO認証が含まれていないか(契約書と営業部門の両方で確認)
- 返上後に品質・環境管理を回す体制を用意できるか
- 「認証が不要」なのか「運用に無駄がある」だけなのかを切り分けたか
3つ目が特に重要です。負担の原因が運用にあるなら、認証範囲の縮小や運用の見直しで解決できる可能性があります。
自社だけで判断するのが難しい場合は、ISOの取得・更新・運用改善を支援している会社へ相談するのがおすすめです。
\ISO運用の見直しを相談したい方へ/
複数の会社を比較して決めたい場合は、別記事「ISOコンサルの選び方とおすすめ比較【中小企業向け】」を。


費用の相場を知りたい場合は、別記事「ISO取得費用はいくら?規格別・規模別の相場と内訳」をご覧ください。




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