「マネジメントレビューって、結局何を報告すればいいの?」
ISO9001の担当になり、はじめてこの言葉に出会ったという声を、編集部はよく耳にします。
規格の要求だからと会議を開いても、何を話せばいいのか分からないまま、時間が過ぎてしまったことはないでしょうか?
けれどもそれは、担当者の理解が不足しているからではありません。
マネジメントレビューとは、経営層が仕組みを点検し、改善を指示する場です。環境省のエコアクション21ガイドラインは、代表者による見直しを「少なくとも毎年1回」と定めています。
- マネジメントレビューの意味と、内部監査との違い
- 報告すべき情報(インプット)と、決定すべきこと(アウトプット)
- 議事録・報告書の書き方
- 実施すべき頻度・参加者と、形だけで終わらせないための注意点
この記事では、報告する項目・決めること・議事録の書き方・頻度を順番に整理します。

ISOの教科書 編集部
- ISOの教科書 編集部の案内役
- 東証プライム上場企業に勤務後、独立
- 中小企業の担当者向けに、取得・費用・運用をやさしく解説
マネジメントレビューは、経営層が仕組みを見直して改善を指示する場
マネジメントレビューは、担当者が報告して終わる会議ではなく、経営層が決定を下す場です。
まず、この活動が何であり、なぜ経営層でなければならないのかを押さえます。
マネジメントレビューとは、経営層による仕組みの定期点検
マネジメントレビューを一言でいえば、経営層が自社の仕組みを定期的に点検する活動です。
日々の運用は現場が担いますが、仕組みそのものを変える権限は経営層にしかないからです。厚生労働省の職場のあんぜんサイトも、労働安全衛生の分野で「経営と一体化する仕組み」という表現を使っています。
マネジメントシステムとは、方針や目標を達成するために、計画・実行・評価・改善を繰り返す組織の仕組みです。品質(QMS)・環境(EMS)・情報セキュリティ(ISMS)など、対象ごとに規格が用意されています。

現場の点検で終わらせず、経営層が仕組みごと見直すのがマネジメントレビューです。
目的は「仕組みが合っているか」、「狙っている成果を出しているか」を確認
マネジメントレビューの目的は、今の仕組みが自社に合っているか、狙っている成果を出せているかを確かめることです。
なぜなら、事業環境が変化することで、以前は妥当だった手順や体制が合わなくなるからです。

この点は、厚生労働省の医薬品品質システムに関するガイドラインにも表れています。経営陣が負う責任を「継続する適切性及び実効性を確実にするため」と表現しています。

つまり、問われているのは「規格どおりに運用できているか」ではなく、「その運用が今の事業にとって意味を持っているか」です。
マネジメントレビューと内部監査の違い
内部監査は手順どおりに運用できているかを確認する活動で、マネジメントレビューは仕組みそのものを変えるかどうかを決める活動です。この違いが、両者を分けるポイントになります。
| 比較項目 | 内部監査 | マネジメントレビュー |
|---|---|---|
| 主な目的 | 自社ルールが規格に適合し、 現場で守られているかの確認 | システム全体の有効性を評価し、 今後の経営方針や改善策を決定 |
| チェックの視点 | ルール通りにやっているか? | このルールは今の会社に合っているか? |
| 実施者(主体) | 社長から任命された 「監査責任者」や「監査員」 | 社長や役員などの経営層 |
| 主な成果物 | 監査報告書(不適合や改善点の指摘) | レビュー議事録・経営層からの改善指示 ・人・お金・設備の配分決定 |
| 位置づけ | 現場レベルの客観的な点検 | 経営レベルの意思決定(戦略的見直し) |
内部監査は決められたルールへの適合を確認する活動であり、ルール自体の是非は扱いません。一方でマネジメントレビューは、内部監査の結果を材料にして、経営層がルールを変えるかどうかを判断します。
両者は対立せず、内部監査の結果がマネジメントレビューの材料になるという関係です。
いそまる「ルール通りか」を見るのが内部監査、「ルールを変えるか」を決めるのがマネジメントレビュー、とセットで覚えておくと迷いません。
マネジメントレビューのインプットは、経営層が判断するための材料を集める
インプットとは、経営層が判断を下すために事前に集める材料のことです。
何を集めるかと、どう束ねるかを分けて見ていきます。
インプットで集めるべき4つの材料
インプットの収集で必要とされるのは次の情報です。
- 目標の達成状況
- 監査の結果
- 外部からの苦情
- 前回決めた処置の状況
この4種類がそろうと、経営層は「狙いどおりか」と「問題は片付いたか」を同時に判断できるためです。


環境省のエコアクション21ガイドラインも、必要な情報として目標の達成状況・実施結果・法規の遵守状況・外部からの苦情を挙げています。
厚生労働省の医薬品品質システムに関するガイドラインは、これに加えて「前回のマネジメントレビューからのあらゆるフォローアップ措置」を求めています。
なお、ISO9001が箇条9.3で求める項目の原文は有償規格に載っているため、正確な文言は規格本体で確認してください。
是正処置とは?
起きた不適合の原因を取り除き、同じ問題が再発しないようにする対応です。
思いついたことを話す場にしないために、集める情報の型を先に決めておくのがおすすめです。詳しくは、別記事「是正処置とは?|是正措置との違いや是正処置報告書の基本を解説」をご覧ください。


報告時は一つの様式にまとめる
各部門からの報告は、ばらばらの資料のままにせず、一つの様式にまとめて経営層へ渡します。なぜなら、形式の異なる資料が並ぶと、経営層が全体像をつかむだけで会議時間が終わってしまうからです。


部門ごとの実績・課題・是正の状況を1枚に集約し、事務局が事前に配っておく運用が実務では取られています。つまり、様式をそろえることが、限られた時間を議論に使うための準備になります。



インプットは、思いついたことを話すための材料ではありません。「目標の達成状況・監査結果・苦情・前回の処置状況」の4つがそろっているか、まずはここだけチェックしてみてください。
マネジメントレビューのアウトプットは、経営層が決めた改善の指示
アウトプットとは、報告を受けた経営層が下す決定のことです。
何を決めるかと、どこまで書くかを順番に見ていきます。
アウトプットで求められる3つのポイント
アウトプットとして求められるのは、次の3点の決定です。
- 改善
- 仕組みの変更
- 資源の手当て
報告を聞くだけで終われば、現場は次に何をすればよいか分からないままになるためです。


厚生労働省の医薬品品質システムに関するガイドラインは、成果に「改善」「資源の配分若しくは再配置」を挙げています。環境省のエコアクション21ガイドラインも、見直しの対象を方針・目標・計画・実施体制と具体的に示しています。
この3点が出てこなければ、実施の記録は残っても改善にはつながりません。
決定事項は、担当者と期限を必ず明記
決定事項は、誰が・何を・いつまでに行うかまで書いて、はじめて実行につながります。「検討する」で止まった記録は、次回に進捗を確かめようがないためです。


担当部門と実施内容と期限の3つを決定ごとに並べておけば、次回のインプットにそのまま使えます。つまり、アウトプットの書き方が、次の1年の動きを決めます。



「検討する」で終わる会議はよくありますが、それでは記録が残っても現場は動けません。誰が・何を・いつまでに、まで書き切ることを意識してみてください。
マネジメントレビューの議事録の書き方
議事録は、開催した事実ではなく、決めた内容の記録として残します。
最低限の項目から順番に、迷いやすいところを埋めていきます。
議事録に最低限残すべき4つのポイント
議事録に最低限残すべき項目は、次の4つのポイントです。
- 実施日時
- 参加者
- インプットした情報
- 決定したアウトプット
この4つが欠けると、審査の場で実施の証拠として説明しにくくなるためです。次の表は議事録の取り方の一例になります。
| 項目 | 書く内容 | 記載例 |
| 実施日時 | いつ開いたか | 2026年4月10日 14:00〜15:30 |
| 参加者 | 誰が出たか | 代表取締役、品質管理責任者、各部門長 |
| インプット | 報告された情報 | 内部監査の結果、顧客からの苦情3件、目標の達成状況 |
| アウトプット | 決めたこと | 検査工程の手順を見直す(担当:製造部長/期限:6月末) |
開催した事実ではなく、決めた内容が読み取れるかどうかが分かれ目です。
様式は、インプットとアウトプットの項目をそのまま見出しに
様式づくりに迷ったら、インプットとアウトプットの項目をそのまま見出しにして埋めていくのがおすすめです。
白紙から文章を組み立てるより、項目に沿って記入するほうが抜けを防げるためです。報告された情報を項目ごとに並べ、その下に決定事項を置くだけでも、審査員が確認しやすい構成になります。


凝った様式より、規格の項目とのつながりが見える様式を選びます。
記録を残すこと自体が、要求事項
議事録を残すことは実務上の慣習ではなく、要求事項として定められた行為です。
経営層が判断した事実そのものを、あとから第三者が確認できる形にしておく必要があるためです。
環境省のエコアクション21ガイドラインは、この要求事項に関する文書類を作成し適切に管理するよう明記しています。


記録がなければ、経営層が判断したこと自体を示せません。



議事録は「開いた証拠」ではなく「決めた証拠」です。様式に迷ったら、インプットとアウトプットの項目をそのまま見出しにすれば、抜け漏れなく書けます。
マネジメントレビューの頻度と参加者
頻度も参加者も、規格が「これが正解」と決めているわけではありません。どちらも、自社の状況に合わせて決め、それを守ることが大切です。
頻度の決め方と、参加者の選び方を見ていきます。
頻度は「あらかじめ定めた間隔」で、年1回以上が目安
規格が求めているのは「あらかじめ定めた間隔」での実施であり、回数そのものは指定されていません。なぜなら、組織の規模や抱えるリスクによって、必要な頻度が変わるからです。


公的な制度では数字が示されており、環境省のエコアクション21ガイドラインは「少なくとも毎年1回」と定めています。
大きな変化があった年は、定例に加えて臨時で開く組織もあります。問われるのは回数の多さではなく、自社で決めた間隔を実際に守れているかどうかです。
参加者は、決定権を持つ経営層と各部門の責任者
参加者の中心は、決定権を持つ経営層と、報告を担う各部門の責任者です。
マネジメントレビューでは、人・お金・設備といった資源の配分まで判断します。そのため、その場で決定できる立場の人が出席していないと、話が前に進みません。


実務では、品質管理責任者が会議の準備・進行(事務局)を担当し、各部門の責任者がそれぞれの実績や課題を持ち寄る、という役割分担がよく取られています。担当者だけが集まる会議になると、決定が提案のまま止まります。



頻度も参加者も、正解が決まっているわけではありません。大切なのは、自社で決めた間隔とメンバーを、きちんと守り続けることです。
マネジメントレビューは、ISO9001だけのものではない
マネジメントレビューは、ISO9001だけの決まりではありません。規格をまたいだ共通性と、日本の制度での扱いを見ていきます。
まずは規格ごとの共通点を確認し、そのあとで日本国内の制度に目を向けます。
3つの規格に共通する「9.3 マネジメントレビュー」
主要なマネジメントシステム規格は、いずれも「9.3 マネジメントレビュー」という同じ場所にこの内容を置いています。
なぜなら、ISO9001・ISO14001・ISO27001などの規格は、「附属書SL」と呼ばれる共通の型をもとに作られているからです。
附属書SLとは?
複数のISOマネジメントシステム規格(品質・環境・情報セキュリティなど)で共通して使われている、章立てのひな形です。このひな形のおかげで、異なる規格を扱う場合でも、章の並び方や用語がそろい、理解しやすくなっています。
JAB(公益財団法人日本適合性認定協会)が公表した資料でも、この共通の型の中に「9.3 マネジメントレビュー」が置かれていることが示されています。


つまり、複数の規格を運用している会社でも、マネジメントレビューの進め方を規格ごとに変える必要はありません。
マネジメントレビューと同じ仕組みが、日本の公的制度にもある
経営層が定期的に仕組みを見直すという考え方は、実は日本の公的制度にも組み込まれています。ISOだけの発想ではなく、組織を継続的に改善するための一般的な型だからです。


医薬品の分野では、厚生労働省の医薬品品質システムに関するガイドラインが「マネジメントレビュー」という言葉をそのまま使っています。ISO規格の言葉が、そのまま国の公的文書に採用されている例です。
労働安全衛生の分野でも、厚生労働省の職場のあんぜんサイトが、事業者による定期的な見直しを指針として定めていると説明しています。呼び方は「マネジメントレビュー」ではなく「見直し」ですが、経営が仕組みを定期的に点検するという骨格は同じです。
呼び方や対象は違っても、経営層が定期的に見直すという要求は共通しています。



ISO9001だけでなく、ISO14001やGMP、労働安全衛生の分野でも同じ考え方が使われています。1つ理解しておけば、他の規格に触れたときも応用が利きます。
マネジメントレビューを形だけで終わらせないための注意点
形だけの会議になるかどうかは、準備の仕方で決まります。
つまずきやすい2点を、先に潰しておきます。
前回の決定事項もインプットに含める
会議を形だけで終わらせないために「前回の決定事項がどうなったかを、次の会議で必ず報告させること」がポイントです。決めたことを追いかけないままにしておくと、会議が「話し合っただけ」で終わってしまうためです。


厚生労働省の医薬品品質システムに関するガイドラインも、前回からのフォローアップ措置を含めるよう求めています。前回の決定事項を一覧にして、会議の冒頭で確認するだけでも、決めて終わりになるのを防げます。
こうして前回の宿題から始める流れを作ることで、1回で終わらない、積み重ねのある会議になります。
インプット不足だと審査で指摘されることも
インプットの一部が欠けたまま実施していると、審査で指摘を受ける可能性があります。
要求されている情報がそろっていなければ、経営層が十分な判断をしたと説明できないためです。
たとえば、「目標の達成状況・監査結果・苦情・前回の処置状況」のうち、苦情の報告だけを都合よく省いてしまうと、審査員から「なぜこの情報が検討されなかったのか」と指摘されることがあります。忙しさを理由に、報告しやすい情報だけを持ち寄る運用は、インプット不足を招きやすくなります。


実施前に事務局が、この4つの項目がすべてそろっているかを照合し、不足があれば差し戻す手順を決めておくと防げます。
インプットの網羅性が、そのままアウトプットの質になります。



「取ったら終わり」ではなく「前回の宿題から始める」意識を持つだけで、形だけの会議になるリスクはぐっと減ります。
マネジメントレビューに関するよくある質問
- マネジメントレビューを簡単に言うと何ですか?
-
経営層が自社の仕組みを定期的に点検し、改善を指示する場のことです。
現場の作業を見る活動ではなく、仕組みそのものを変えるかどうかを判断する活動にあたります。
- ISO14001のマネジメントレビューも、ISO9001と同じですか?
-
ほぼ同じです。
対象が品質か環境かという違いはありますが、経営層による定期的な見直しという骨格は共通しています。附属書SLという共通の構造により、どちらも箇条9.3に置かれています。
- GMPにおけるマネジメントレビューとは何ですか?
-
上級経営陣が、医薬品品質システムの適切性と実効性を確保する責任を負うという制度です。
医薬品の分野では、厚生労働省の医薬品品質システムに関するガイドラインがこれを定めています。
- マネジメントレビューの頻度は、年1回で足りますか?
-
年1回が最低限の目安です。
規格は「あらかじめ定めた間隔」を求めているだけで、回数を指定していません。環境省のエコアクション21ガイドラインは「少なくとも毎年1回」としています。
- 内部監査とマネジメントレビューは、どちらを先に実施すべきですか?
-
内部監査を先に行います。
内部監査の結果がマネジメントレビューのインプットになるため、監査結果を持ってからマネジメントレビューに臨むのが一般的です。
- マネジメントレビューを実施しないとどうなりますか?
-
審査での不適合の対象になる可能性があります。
実施していても、記録が残っていなければ、同様に説明が難しくなります。
- 中小企業でも、マネジメントレビューの実施を省略できませんか?
-
省略することはできません。ただし、規模に応じた簡単な形で行うことは可能です。
たとえば、従業員数名の会社であれば、代表者と担当者の2人だけで、決められた項目を順に確認し、その場で決定事項をメモに残すだけでも要求を満たせます。大がかりな会議を開く必要はありません。
まとめ:マネジメントレビューは「仕組みを変えるか」を決める場
マネジメントレビューは、経営層が仕組みを点検し、改善を指示する場です。そのためにインプットとアウトプットが不可欠で、その内容を残す議事録も欠かせません。
- インプットの中心は、「目標の達成状況」「監査結果」「苦情」「前回の処置状況」の4種類
- アウトプットとして求められるのは、「改善」「仕組みの変更」「資源についての決定」の3点
- 議事録には、「日時」「参加者」「インプット」「決定事項」を残し、担当と期限まで書き切る
- マネジメントレビューの頻度は最低でも年に1回
なお、Nemkoによると、ISO9001は2026年9月に改訂版が発行される予定です。BSI(英国規格協会)は、改訂後もマネジメントレビューの枠組みが継続すると説明しています。
改訂の全体像は、別記事「【2026年9月】ISO9001:改訂2026|変更点・移行期限と中小企業がやること」をご覧ください。


マネジメントレビューの運用に不安がある場合は、専門コンサルに相談する方法もあります。
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ここまでお疲れ様でした!マネジメントレビューは、身構えなくても、インプットとアウトプットの型さえ押さえておけば、きちんと回せます。困ったときは、この記事の内容をいつでも見返してくださいね。






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